生産計画の立て方とは?成功させるためのポイントを紹介!
生産計画とは?立て方のコツや最適化の方法、生産管理システムの活用法をご紹介
製造業において適切な生産計画を立てることは、余剰在庫のリスクを軽減したり、人的コストを削減したり、仕入れ担当者と現場作業員の連携がしやすくなったり、納期に余裕が出たりとプラスに働きます。
しかし、日本では工程管理にばかり目が向きがちな企業も多く、中には生産計画についてあまり注視していない企業もあるかもしれません。
安定した生産性とコストの削減には生産計画が欠かせないため、生産計画とは何か、生産計画の位置づけを理解することが重要です。
そこで今回は、生産計画の概要、生産計画の立て方、生産計画における課題、成功の秘訣などをご紹介します。ぜひ、ご覧ください。
目次
生産計画とは
「何を(製品)」「いつ(時期)」「どれほど(数量)」生産するのかを計画することを生産計画といいます。生産計画の内容には「製品の原材料・部品に関すること」や、「製造〜出荷までの日程に関すること」も含まれています。
しっかりとした生産計画を立てることは、生産業務の効率化につながります。
「QCD(Quality_品質、Cost_コスト、Delivery_納期)」の維持・向上を実現できる他
資金計画や人員計画にも影響する部分なので、きちんと定める必要があるのです。
生産計画には「押し出し方式」と「引っ張り方式」があり、それぞれの特徴は下記のとおりです。
押し出し方式
押し込み生産を行うための生産計画で、PUSH型とも呼ばれています。事前に立てた生産計画をもとに作業を進めるため、業務自体はスムーズです。しかし、製造する数量などに関して生産工程の下流側(後工程=顧客)のニーズにとらわれないため、余剰在庫が出やすく、きちんと統制しなくてはコスト高になります。
なお、生産スケジュールを立てるシステムを導入することで、生産量に対する適切な人員やリソースを把握でき、コストを抑えることが可能です。
引っ張り方式
引き取り生産を行うための生産計画で、PULL型とも呼ばれています。生産工程の下流側(後工程)から上流側(前工程)へ向かって製造を指示します。製品の数量や製造ペースに関して、顧客から受注した数量や納期をみて計画を立てるため、余剰在庫が出にくいという特徴があります。
生産計画と製造計画の違い
生産計画は「生産」における広範囲の計画を指すものであり、生産管理・購買管理・在庫管理・品質管理・工程管理などが該当します。一方、製造計画は生産管理の中の「製造」に関する計画を指すもので、主に製造現場における作業進捗や作業工程の管理・計画を指します。
生産計画という全ての生産活動を包む大きな円の中に、製造計画という製造工程のみ内包する小さな円があるとイメージすれば良いでしょう。
生産計画はなぜ必要?目的と重要性
生産計画は、多くの製造業の企業にとって必要不可欠なものです。毎回生産する品目と数量が同じであれば必要ありませんが、多くのビジネスにおいて需要を一定にすることは困難です。さらに新しい製品が頻繁に登場し、設備も入れ替わり、担当者の増減も発生します。こうした変化に柔軟に対応し、生産を最適化するために生産計画が求められると言えます。
生産計画には次のような目的があります。
スピーディーな納品、納期の遵守
精度の高い生産計画があれば、お客様からの受注状況を考慮して最適な数量の生産を行うことが可能です。適切な数量の在庫を持つことで、お客様の要求にスピーディーに応えることができます。
無駄なコストの削減
受注に応じて最適な人員配置と過不足ない調達が行われれば、無駄なコストを削減することができます。
業務効率化
生産計画を作成し見える化することで、自身が担当する工程のみ考えがちな製造現場において、俯瞰して見ることができます。担当する工程や製造プロセス全体で改善するべきことが見え、生産性向上につながります。
生産計画の立て方
最適な生産計画を作成する為には、下記のポイントに留意しましょう。
生産計画は期間別に、大日程計画、中日程計画、小日程計画の3つに分けられます。
各々の計画の立て方は、下記のとおりです。
大日程計画の作成
大日程計画では、3か月〜1年間ほどの生産計画の軸となる基本方針を計画します。過去の実績を確認しながら、製造量や受注量、納品量を予測して計画を立てます。予測した製造量を達成するにはどんな設備が必要か、現行製品の改良や新製品の開発は必要か、人員はどれくらい確保すべきかなど、予測をもとに大まかな方向性を決め、状況の変化にあわせて適宜見直しを行います。
中日程計画の作成
中日程計画では1〜3か月ほどの生産計画を立て、受注内容をもとに製造量や製造ペースを決めていきます。立案した製造量や製造ペースを達成するために、現場の生産能力に関する計画や原材料・部品調達の計画、人員計画など、さまざまな計画を立てます。
小日程計画の作成
小日程計画では、1週間〜1か月ほどと短期の生産計画を立てます。大日程計画・中日程計画とは異なり、小日程計画は計画どおりに作業を進めなくてはなりません。生産性や稼働できる生産ライン、現場の設備、人員の配置、作業完了日に至るまで細かく決定するため、製造業に関する高度な知識と経験が必要となります。
生産計画はどれくらいの頻度で見直すべきなのか
大日程計画、中日程計画、小日程計画で生産計画の見直し頻度は異なります。
大日程計画は1〜3か月に一度ほど、中日程計画は毎週または毎月ごとに、小日程計画ではほぼ毎日のように見直しを行います。何かしらの過不足がある場合は都度見直し、再度計画を立てて対応する必要があるのです。
生産計画を作成する上での課題
生産計画の作成において、課題に直面する企業も少なくありません。
どのような課題に悩まされるかは企業によって差はあるでしょうが、主に直面しやすい課題は下記のとおりです。
・市場動向を計画内に組み込む方法 ・納期変更などの対処方法 ・販売計画を反映する方法 ・在庫の過不足を出さないようにする方法(在庫計画) ・生産にかかる負荷の調節 ・資材調達の方法 ・他の計画(人員計画・原価計画など)との乖離はないか ・製品の品質に問題があったときの対処法 |
さまざまなことを想定しても、上記の課題が浮き彫りになる可能性はゼロにはできないでしょう。
しかし、その中でできるだけトラブルが起きないようにするためにも、生産計画を立てる際はあらゆるデータや過去の実績なども参考にしつつ、細かい点まで考慮して作成することが大切です。
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生産計画の精度を向上させるポイント
生産計画を立案するには、販売計画や受注状況、材料の在庫、調達、人員、設備のリソースといった多様な情報をもとに立案する必要があります。生産計画の精度が低いと、材料の不足や前工程の待ちが増え、生産性の低下と販売機会の損失につながりかねません。そこで生産計画の精度を向上させるためには、次のようなポイントを押さえて立案する必要があります。
リソースの準備
生産を行う上で必要なリソースは「Man(人員)」「Machine(設備)」「Method(手順)」「Material(材料)」であり、これを4Mと呼びます。この4Mが準備されている状態を作るために計画を組み立てていく必要があります。
●Man(人員)
担当者の人数やスキル、稼働状況を考慮して計画を立てる必要があります。
●Machine(設備)
品目ごとに生産可能な設備の稼働状況やサイクルタイム・スタンダードタイムを考慮する必要があります。
●Methodd(手順)
製品ごとに標準化された各工程の関係性を考慮して計画を立てる要があります。
● Material(材料)
生産するのに必要となる材料について、部品構成表やレシピをもとに生産する時点で揃うように手配する必要があります。
4Mを考慮して計画することで、精度の高い計画を立てることが可能です。
バッファの用意
計画にバッファ(余裕)を持たせることで、欠員が出たり、設備に不具合があったりしたときも作業工程が遅れる心配がありません。
生産計画を管理できるツールの導入
生産計画に有効なツールを導入するというのも一つの方法です。ツールには次のようなものがあります。
●PERT図(パート図)
各工程の関係性を視覚化した図です。全体の工程の流れと各工程に必要となる日数・時間が分かりやすくなります。
●ガントチャート
工程の開始日・終了日・マイルストーンを棒グラフで表したものです。各工程でどのくらいの時間がかかるのかがわかるため、前後の工程の関係を把握しやすくなります。
●生産管理システム
生産管理システムは原料調達から出荷まで生産に関わる業務を管理するシステムで、生産計画もその一部です。複雑化しやすい生産計画をデータで一元管理できます。
●生産スケジューラー
生産計画に特化したツールです。各工程で設備や人員などのリソースの割り当てや作業時間の算出が算出できるため、生産計画の精密な管理が可能です。生産管理システムよりもさらに細かい粒度で計画を立案できます。
生産計画をサポートする生産管理システム「R-PiCS NX」
生産計画を作成するツールとしてExcelを使用する企業も少なくありません。生産計画のPERT図やガントチャートを手軽に作成できるテンプレートも多数公開されています。ただ、Excelでは作成が煩雑になって精度が下がったり、属人化して特定の人しか作成できないようになってしまったりと弊害も多いものです。
そこで生産計画の立案を効率化し、精度を上げるためにお勧めなのが、生産管理システムを活用する方法です。受注、受入、出荷などの実績が自動で反映されるため、計画を立てやすくなります。また需要予測を見込データとして登録でき、需要見込残、受注残、入庫予定などから時系列で在庫推移や過不足を確認して未来の過不足を予測できるため、生産計画の精度向上に貢献します。
JBCCが提供する「R-PiCS NX」は、生販一元管理を実現する生産管理システムです。R-PiCS シリーズは1994年の発売以来、多くの中堅中小製造業のお客様に支持され、多種多様な機能を実装してきました。
「R-PiCS NX」は需要見込み機能や基準日程計画(MPS)機能などがあり、在庫の過不足などを確認・予測することも可能です。受注や入庫、出荷の数字は基準生産計画画面に反映されるため、確認も瞬時に行えます。
「R-PiCS」について詳しく知りたい方は、下記のリンクもご確認ください。
まとめ
生産計画は業務効率化や生産性の向上、余剰在庫リスクの軽減など、製造業において重要な役割を果たします。ただ計画を立てれば良いわけではなく、さまざまなことを考慮して細かな部分まで生産計画を詰める必要があるため、計画を立てる担当者には製造業に関する知識や経験が不可欠です。
JBCCでは、生産現場の生の声に耳を傾け、製品の変革を続けてきました。こうした取り組みの中で蓄積されたノウハウをもとに、担当者の方に役立つ生産管理システムに関する記事やお役立ちコラムを作成しています。
生産管理の立て直しについては下記記事にて詳しく解説しています。製造業に従事する方は、ぜひご覧ください。
【記事】
【日本の製造業・生産管理の立て直しの課題と改革の方向性】 第六回 生産マネジメントとしての生産管理のフレームワーク化
また、生産計画策定時に抑えておきたいOODAループについても解説しています。
【お役立ちコラム】
OODAループとは?PDCAサイクルとの違いも解説
これまでの知見をもとにお客様の抱える課題に寄り添い、最適な提案を行っています。生産計画について本格的に見直したいとお考えのお客様は、ぜひご相談ください
<文責>
JBCC R-PiCS事業 編集部