製造業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の進捗度合いは?DX推進が二極化している原因とは
■DXは実際どの程度実施されているのか?
経済産業省は、2018年9月に「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」を公表し、DXの推進施策を展開してきました。
特に、「2025年の崖」はIT業界や古いシステムを利用する企業にとって大きな課題として認識されました。
これらは本コラムでも以下のように取り上げました。
生産管理コラム 62回 中堅・中小製造業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)ジャーニーとは?
生産管理コラム 65回 ラン・ザ・ビジネスと「2025年の崖」とは?
また、最近新聞やテレビCMでもデジタル変革「DX」の単語を良く目にします。
関連業務や事業に関係がない方へも広く知れ渡ってきている感じです。
さて、この発表から約2年半が過ぎましたが、DXは実際どの程度実施されているのでしょうか?
「崖」から転落しなくて済む状況なのでしょうか?
2020年12月末日、経済産業省はこの答である「DXレポート2 中間報告」を発表しました。
今回はこの報告内容を中心にご紹介します。
まず先に結論です。
アンケート調査では、
『実に全体の9割以上の企業がDXにまったく取り組めていない(DX未着手企業)レベルか、散発的な実施に留まっている(DX途上企業)状況』であることが判明しました。
『デジタル変革に対する現状への危機感を持つ国内企業は増加しているものの、
「DXの取組を始めている企業」と「まだ何も取り組めていない企業」に分かれている』
つまり→「二極化している状況」と報告しています。
■DX推進が二極化している理由
理由としては、『DXレポートによるメッセージは正しく伝わっておらず、
「DX=レガシーシステム刷新」、あるいは、現時点で競争優位性が確保できていればこれ以上のDXは不要である、等の本質ではない解釈が是となっている』としています。
ただ、少し状況は変わりました。
コロナ禍は事業環境を大きく変化させ、経営トップの企業文化(業務・慣習)や固定観念の考え方次第で、変化への適用力に大きな差がでました。
つまり、コロナ禍はDXが単なるITシステムの更新問題ではなく、企業文化刷新の問題、つまりDXの本質を判らせてくれたことになります。
■DXレポート2が示す「DXを加速させる今後」
DXレポート2では、DXを加速させる今後について超短期/短期/中長期で方法性を示しています。
【超短期】
★喫緊の課題であるコロナ禍でも事業継続ができるよう市販製品やサービスをすぐに導入すること。
これは業務のオンライン化や業務プロセスのデジタル化をすぐ行うようなことです。
大事なことは、経営トップがこれらにより「変革の小さな成功体験」を得ることとしています。
確かに、「これまでIT導入に何ら興味が無い社長が、Web会議の便利さに一番良く利用している」
という話を聞いたことがあります。
【短期】
★本格的なDXを進める体制整備を整えること。
DXを担う関係者の理解等の合意形成や推進体制を確立することです。
特に製造業に関係がある「業務プロセスの再設計」も必要になります。
「業務プロセスの再設計」で重要なことは以下の通りです。
・「人が作業することを前提とした業務プロセス」を、デジタルを前提とし、かつ顧客起点で見直しを行うこと
・業務プロセスは恒常的な見直しとすること(元に戻らせない)
・業務プロセスの見直しは、顧客への価値創出に寄与するかという視点で行うべき
【中長期】
「協調領域」と「競争領域」に分けて資源の投入を割り当てるとしています。
協調領域とは
→ 自社の強みとは関係の薄い領域で、競争領域はビジネスの強みである領域のことです。
協調領域でのIT投資は、SaaSやパッケージソフトの活用で効率化・抑制し、生み出した投資余力を競争領域へと割り当て循環を確立する流れです。
また、 IT投資の効果を高めるために、変化対応力の高いITシステムを構築する必要があります。
ですから、弊社が販売している生産管理パッケージにおいても、成果がいち早く享受できるよう、仮説・実施できるアジャイル型の導入が必要になってくるものと思われます。
当然、ユーザー部門ではそれを検証できる体制も必要です。
超短期/短期/中長期の流れは、DXを認知・理解し/DX戦略を策定/そして新たなデジタルプラットフォームをつくるステップとなります。
年が明け
2021年2月4日、経済産業省は、デジタルトランスフォーメーション(DX)が進展した企業によって構成される「デジタル産業」の姿を描き、
その産業を創出するための道筋及び政策のあり方について議論するための「デジタル産業の創出に向けた研究会」を立ち上げました。
研究会では、DXを推進するユーザー企業・ベンダー企業双方が新しい価値の提供を主体としてビジネスを変革するための方向性を提示していくとしています。
さて、貴社のデジタル変革DXは、どのように実施できていますか?
「崖」から転落しない方策や体制はできていますか?