「ラン・ザ・ビジネス」と「2025年の崖」 製造業における基幹システムはどうなる?
平成30年9月経済産業省所管の研究会から、DX(デジタルトランスフォーメーション)レポートが発表されました。
副題は、ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開。
この発表からちょうど1年が経過しましたが、この「崖問題」の解決についてはあまり進展していないようです。
この「崖」は、地表の高度が急変する部分、そこへじわりじわりと近づいているのかもしれません。
急変し崖になる理由は、現在、企業が使う基幹システムのうち21年以上使い続けている会社の割合は2割。
これが2025年には6割と3倍になることが背景にあります。
また、この基幹システムは事業部門毎に構築されていたり、過剰なカスタマイズで長年運用するなか、内部構造が複雑化しブラックボックスになっています。
2015年にIT人材は17万人不足していましたが、2025年には43万人不足する試算になっています。
既存システムの維持にIT人材が奪われると、デジタル変革を担うIT人材が益々不足してきます。
・・・という流れ(ロジック)が、いわゆる「2025年の崖」問題です。
日本では、IT関連費用の80%が、この既存ビジネスの維持や管理へ割り当てられており、これを「ラン・ザ・ビジネス(run the business)」と言います。
多くの経営者が、将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを創出するDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性について理解はしてはいますが、現場の抵抗力、ITの人的対応力や投資力など大きな課題も認識されています。
経済産業省がこれら危機感を訴えている理由は、この課題を克服しないと、日本全体で2015年以降、現在の3倍である年最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるからです。
この経済損失そのものが「2025年の崖」の本質的な意味になっているようです。
製造業における「基幹システム」は、まさに「生産管理システム」を軸とした業務システムです。
弊社への引合も、DXを意識しているか否かは別にしても、「20年前のメインフレームの生産管理システム更新」や「10年間使い続けたオフコンシステムの更新」などの案件が多くあります。
但し、
本コラムの第62回「中堅・中小製造業におけるDXジャーニーとは?」でも書きましたように、基幹システムを更新しただけでは、新たなビジネスモデルの創出にはならず、そこを起点に「ビジネスモデルを変え」「顧客価値の向上」(売上の拡大)へ移行する必要があります。
レガシーシステムを、ハードウェアやOS・ミドルウェアなどを単に置き換えるだけでは、「再レガシー化」を招く可能性があります。
つまり、維持管理費用の「ラン・ザ・ビジネス(run the business)」からビジネスを成長させるための費用「グロー・ザ・ビジネス(grow the business)」やビジネスを変革するための費用「トランスフォーム・ザ・ビジネス(transform the business)」へIT関連費用の割合を変えていく必要があります。
そのために、DXジャーニーの起点である新しい生産管理システムの要件は「新たなデジタル技術が導入され、ビジネス・モデルの変化に迅速に追従できる事」と言えます。
既存業務ありきではなく、若い世代、つまりデジタルネイティブ世代に合わせた仕組みや考えが必要なわけです。
DXレポートでは、まとめとしてDX実現シナリオを以下のように述べています。
「2025年までの間に、複雑化・ブラックボックス化した既存システムについて、廃棄や塩漬けにするもの等を仕分けしながら、必要なものについて刷新しつつ、DXを実現することにより、2030年実質GDP130兆円超の押上げを実現」
皆さまの生産管理システム更新計画は如何でしょうか?