サブスクリプションモデルとは?製造業における活用の事例は?
■製造業におけるサブスクリプションモデル
上場企業の第一四半期決算が発表されています。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響をうけ、特に製造業の多くは大きく収益を減らしています。
国内自動車メーカーでは唯一「トヨタ自動車」が最終黒字となっています。
その理由は需要急減の中、"原価低減で損益分岐点をこれまでより「さらに」下げることができたため"だと言うことです。
トヨタの原価低減は、7つのムダ(本コラム 第41回 「「働き方改革」と製造現場のムダとは?」を参照 )に代表されるように、会社全体で徹底されています。 原価低減は、需要拡大期や縮小期に関わらず、会社の収益に大きくインパクトを与えます。
一方、IT業界では新型コロナウイルスの影響を受けず、通常期以上の好調な決算が発表されている会社も多くあります。
ゲームメーカーの「任天堂」の第一四半期決算は、売上高は前年同期比約2倍、経常利益は約5.7倍と、巣ごもり需要から好決算になったようです。
自社でもテレワークの推進や働き方改革を実施しましたが、その代名詞的存在となった「サイボウズ」社は、月次クラウド関連事業売上高が、昨対125%で堅調に推移しているようです。
ソフトウェアにおけるクラウドシステムの多くはサブスクリプション(継続課金)型のビジネスモデルを採用し、売上を堅持・拡大しています。
もちろん、サブスクリプションモデルでありながら、初期の投資回収もままならず、利益面で苦しい企業も多く存在します。
では、製造業における、サブスクリプションモデルの適用はどうでしょうか?
ものづくりにおける、「所有」から「利用」の考え(本コラム 第47回 「製造業の「モノからコト」へのシフトとは?」 参照)を実現することは簡単では無く、まだ成功事例は多くありません。
成功しているソフトウェアのサブスクリプションモデルは、低価の月額料金払いだからではなく、継続してお金を払ってもらうための「顧客視点」が評価されていると見るべきです。 チャーン(解約)されない仕組み・工夫が費用と組み合わされているわけです。(ネガティブチャーンと言います)
ですから、ものづくり企業のモノからコトへの移行でも、この"顧客視点"が重要であり、本コラム 第47回」では、これらを
「顧客経験価値」(Customer Experience Management)と表現しました。
そこで、製造業のカスタマーエクスペリエンスマネジメントを考えてみました。
「微細精密加工を特長としている加工機械を製造している製造業」のサブスクモデルの検討例(サンプル)です。
まず、機械の値段や加工できる規格などの機能的な価値ではなく、顧客の感覚や情緒など購入後の体験(コト)の整理が必要です。
1.Sense(顧客にどのような感覚を持ってもらうか)
→微細精密加工をした部品は最終顧客の「満足度を高めるものである」という感覚をもってもらう。
2.Feel(顧客にどのような情緒になってもらうか)
→部品の精度が上がれば上がる程、最終顧客の反応も良く「気持ち良く、心地よい」という感情になってもらう。
3.Think(顧客にどのような好奇心を持ってもらい、何を創造してもらうか)
→精度向上のために「どう設定するか、どこに注意し加工すれば良いか?」という情報を蓄積し新たな部品加工への創造力を働いてもらう。
4.Act(顧客にどのように体感してもらうか)
→新規設備購入前のお客様は、技能Web講座や仮会員制度により他社と情報共有ができるようにコト体験をしてもらう。
5.Relate(顧客に他者とどのような一体感を感じてもらうか)
→同様の機械を購入した会員サイトで、精度向上や公開可能な情報交換をを通し、顧客同士および弊社と一体感を感じてもらう。
上記を考慮し、加工機械のサブスクモデルを検討 (あくまでも例)します。
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・機械の一部運用費用と保守費用をサブスク化する
・機械の利用状況を弊社内でモニタリング化する
・消耗品やオプションが会員価格で購入できる
・購入状況、利用状況、加工状況に応じ、サブスク費用を設定
・会員サイトへ加工情報などUP毎にマイレージ付与
・マイレージは保守部品代やオプション費用購入にも利用可能
・年間の利用状況やマイレージに応じ表彰など実施
・技能者認定制度や人材採用情報の共有化も実施
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など、これらは顧客ロイヤルティを高めネガティブチャーンを実現した新たなサブスクモデル(例)です。
少し無理があるかもしれませんが、サブスクリプションモデルは、今後、製造業においてもキラーコンテンツになると感じます。