業務改善助成金とは?制度の要件と注意点
先日ニュースで、日本の賃金伸び率は、OECD(経済協力開発機構)加盟の先進国中で唯一マイナスだと報じていました。
OECDは、全労働者の収入に基づき、「一人当たりの賃金」を各国通貨ベースで算出し指数化をしています。
日本の場合、1997年から2018年の21年間で賃金は8.2%減少しているそうです。
その他の国では、韓国167%増、イギリス93%増、アメリカ82%増、フランス69%増など軒並み増加しています。
政府発表のニュースでは「雇用や所得環境の改善が続いている」「5年連続で最高水準の賃上げを実現している」などを報じられていますので、かなり情報に乖離がある状況です。
最高益の発表や大企業の内部留保400兆円以上との報道など、本当に景気が良いのであれば、物価も上がり、賃金も上がるわけです。
しかし、本コラム 66回 製造業の人材不足、特定技能外国人の活用とは?にも述べましたように、外国人や非正規化社員の増加など、低賃金での労働力で、企業の利益が確保が維持されているのかもしれません。
多くのエコノミストが、これら減少の理由や対策のコメントをしていますが、21年間上がらないどころか下がっている、つまり21年間も有効な対策が取られていないと言う現実には愕然とします。
これら賃金の伸び悩みは、私のお客様である中堅・中小の製造業でも多くのお話をお聞きします。
中堅・中小の製造業では、加えて生産性向上なども課題となっています。
人手不足、貴重な人材、限られた人材で生産性向上も行う、しかし賃金は上がらない構造になっているようで、何とも対策が難しい構造です。
そんな中、労働省の「業務改善助成金」をご紹介します。
生産性向上と賃金向上をセットにした助成制度で、本年度の申請締め切りが2020年1月末までとなっています。
「業務改善助成金」は、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げを図るための制度です。
生産性向上のための設備投資などを行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成するものです。
その要件は、
1.賃金引上計画を策定すること
事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる(就業規則等に規定)
2.引上げ後の賃金額を支払うこと
3.生産性向上に資する機器・設備などを導入することにより業務改善を行い、その費用を支払うこと
(1) 単なる経費削減のための経費
(2) 職場環境を改善するための経費
(3)通常の事業活動に伴う 経費は除く
4.解雇、賃金引下げ等の不交付事由がないこと
などです。
事業場内最低賃金を引き上げた場合(時給換算で30円以上)、生産性向上のための設備投資等にかかった費用の75%~80%が助成されます。
また、生産性(労働者1人当たり付加価値)を向上させた場合、助成率は80%~90%へ増加されます。
但し、この制度は事業所の従業員が30名以下が対象であり、助成金の最大額は100万円となりますので注意が必要です。