「MoSCoW分析」って何? 現場の「要求と要件」を分けるポイント
●製造現場の「要求」と「要件」 何が違うの?
生産管理の仕様をまとめる時に、現場の意見などを「要求」と「要件」に分けて整理していますか?
通常あえて、意識的に区別している方は多くはないと思います。
英語では、「Requirement」と一語で済まされても、日本語での「要求」と 「要件」には違いがあります。
IPA(独)情報処理推進機構では、システム的視点で
「要求」=システムを使ってやりたいこと
「要件」=システムに取込む要求
と定義しています。一例を挙げると、
「棚卸業務の工数削減」・・・要求
「棚卸表の自動出力」 ・・・要件
となります。
そして、お客様から「要求」は良く言われるのですが、「要件」を決めてくれない場合が多くあります。
または、パッケージで実現できる「要件」をお伝えしても、「要求」が満足するか答えてくれない場合もあります。
また逆に、要件だけが書かれていて、それをどう利用するかが不明瞭な場合もあります。
何をシステムに取込むのか? 何を取込まないのか? を明確にできない事が多いのではないでしょうか?
(参考)
第8回 「現場が判らない! 生産管理力は継承できていますか?」
のちのち、ユーザーからベンダーへ「全然システム化できていない!」
「我々はちゃんと要件は出している」と言われることもあろうかと思いますが、実際は要求だったりするので、そこに齟齬が起こって永遠(?)につづくプロジェクトなり、ユーザーもベンダーも大変な状況になってしまうケースも世の中には少なくないでしょう。
●現場の要求を整理する「MoSCoW分析」
このような事を起こさないために、会社や部門の目標を達成するために関係者間の橋渡しを行うなど、タスクとテクニックの集まりが必要となり、それを「ビジネスアナリシス」といいます。
そして、このビジネスアナリシスの知識体系をBABOK(Business Analysis Body of Knowledge)といいます。
ここではBABOKの説明は割愛しますが、この考えのひとつに「要求アナリシス」と いうのがあり、以下のような体系で整理してあります。
1.要求の優先順位をつける
2.要求を体系化する
3.要求の仕様化とモデリングを行う
4.前提条件と制約条件を定義する
5.要求を検証する
6.要求の妥当性を確認する
先に記述した、要求=システムを使ってやりたい事、を関係者の調整や制約に注意し、要件の優先、妥当性を見出す体系と考えて良いかと思います。
さらにそのツールとして、「MoSCoW分析」があります。
M=Must(必須)
この要件が実現されなければ、システムやサービスの導入目的(要求)が果たせないもの
S=Should(推奨)
この要件が実現されなくても、システムやサービスの導入目的)(要求)が果たせるが、メリットが大きく損なわれるもの
C=Could(可能)
その要件が実現されなくても、システムやサービスの導入目的(要求)が果たせるしメリットもあるけれども、実現すれば更に大きなメリットがあるもの
W=Would(先送り)
現時点では議論する必要がないまたは将来的に持ちたいもの、実現の要否判断をしたところで、導入目的(要求)にもメリットにも寄与しないもの。
このように「MoSCoW分析」は要求定義の整理に利用できる区分ツールです。生産管理システム以外でも、工程改善、設備導入などでも応用できると思います、ぜひ、活用してみて下さい。