免税事業者からの仕入れとインボイス制度対応は大丈夫か?

■インボイス制度における免税事業者との取引の場合の影響は


令和5年10月から、消費税の適格請求書等保存方式、いわゆるインボイス制度が始まります。
制度開始時のインボイス発行業者となるための登録申請は、原則令和5年3月31日までとなっていますが、単に登録番号の取得のみならず、今回は製造業における影響などを挙げたいと思います。

製造業におけるインボイス制度の影響のひとつに、免税事業者との取引があります。
特に地方の工場では、周辺の小規模事業者や個人事業者の方へ軽微な加工や組み立て等をお願いしている場合が多いかと思います。

これらの依頼先が免税事業者(課税売上高が1千万円以下)の場合の影響はどうでしょうか?
通常、免税事業者は消費税を請求し受領してもそれらを国へ支払う必要はなく、そのまま利益にする事ができます(益税という)。
つまり、消費税分を多く受領できていました。

支払った工場側は、自社が製品を販売して受領した消費税(仮受消費税)と取引先へ払った消費税(仮払消費税)を控除し国へ消費税を支払う方法がこれまでのやり方です。
インボイス制度は、上記益税を無くす目的もあり、インボイス発行業者で無い小規模事業者や個人事業者分は、今後原則控除できないことになります。

但し、免税事業者との取引控除については6年間の経過処置が設けられています。
当初3年間は80%、次の3年間では50%を仕入税額からの控除を認めています。
しかし、2029年10月1日以降は全額仕入税額控除が不可となります。

自社が課税売上5千万円以下で「簡易課税制度」を適用している場合は、インボイスを保存しなくとも仕入税額控除を行うことができるので大きな問題はありません。
では、そうでない場合今後どのように対応すれば良いでしょうか?

単純には、
注文を受ける側、つまり小規模事業者や個人事業主で課税売上が1千万円以下の場合でも、
登録申請をしインボイス発行業者となり、これまで益税であった消費税を正しく支払い、発注側の工場では、それに基づき税額控除をその他仕入先同様に行う」事が考えられます。

前提は仕入先がそのようにインボイス発行業者へなってもらえるか?
となりますが、ここで問題になるのが

そのように指導や指示を行う場合やインボイス発行事業者でない業者への発注を制限する等の場合です。
つまり独占禁止法の「優越的地位の濫用」問題です。

国税庁では、インボイス制度の実施を契機として取引条件を見直すことそれ自体が、直ちに問題となるものではないが、
見直しに当たっては、「優越的地位の濫用」に該当する行為を行わないよう注意を促しています。
併せて工場の場合多くはいわゆる下請法との関連も考慮が必要です。
下請法と独占禁止法のいずれも適用可能な行為については、通常、下請法が適用されます。

優越的地位の濫用と注意点を国税庁のHPから見てみましょう。

1.取引対価の引下げ
  インボイス制度の実施後の免税事業者との取引において、仕入税額控除ができないことを理由に、免税事業者に対して取引価格の引下げを要請し、取引価格の再交渉において、仕入税額控除が制限される分について、免税事業者の仕入れや諸経費の支払いに係る消費税の負担をも考慮した上で、双方納得の上で取引価格を設定すれば、結果的に取引価格が引き下げられたとしても、独占禁止法上問題となるものではないとしています。
しかし、交渉が形式的なもので、工場側の都合のみで著しく低い価格を設定したり、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格を設定した場合は、優越的地位の濫用として、独占禁止法上問題となります。
 
2.商品・役務の成果物の受領拒否、返品
  仕入先が免税事業者であることを理由に、製品の受領を拒否することは、優越的地位の濫用として問題となります。また、これらは下請法上も同様の規制を受けます。

3.協賛金等の負担の要請等

4.購入・利用強制
  インボイス制度の実施を契機として、免税事業者である仕入先に対し、取引価格の据置きを受け入れるが、その代わりに、取引の相手方に別途、協賛金、販売促進費等の名目での金銭の負担を要請することは、その内容が不明瞭で仕入先が不利益を受ける場合や、その他希望していない商品の購入を要請することは、優越的地位の濫用として問題となります。

5.取引の停止
  取引自由の原則はあるものの、インボイス制度の実施を契機として、免税事業者である仕入先に対して、一方的に、免税事
  業者に不当に不利益を与えることに対し、これに応じない相手方との取引を停止した場合には、独占禁止法上問題となるおそれがあります。

6.登録事業者となるような慫慂(しょうよう:勧める事)等
  取引先の免税事業者に対し、課税事業者になるよう要請すること自体は、独占禁止法上問題となるものではありません。しかし、課税事業者になるよう要請することにとどまらず、課税事業者にならなければ、取引価格を引き下げるとか、それにも応じなければ取引を打ち切ることにするなどと一方的に通告することは、独占禁止法上又は下請法上、問題となるおそれがあるとされています。

以上のインボイス制度と免税事業者との関係は十分に注意する必要があります。
また、2023年12月までの対応が必要な電子帳簿保存法も関連してくる場合があります。
電子取引における電子帳簿保存法対応は必須となりますので、インボイス制度による注文書の発行などをメール添付など電子取引で行う場合、注文書の変更(登録番号の表示等)と併せて対応を図る必要があります。

製造業の事業環境は円安や原油高なども加わり、総じて良い環境とは言い難いですが、これら法対応を図りつつ、受け身で無い将来を見据えたDX戦略を目指したいものです。

*本文は2022年11月1日時点の各種情報に基づき記載しています。
今後、免税事業者の税負担減税等経過処置が変更になる場合があります。


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