製造業の「サービス化戦略」とは?3つの段階について解説
■製造業のサービス化、保守サービス業務
本コラム第47回では、製造業の「モノからコト」へのシフトについて述べました。
その中では、商品の「所有に価値」を見出す消費を「モノ消費」、商品やサービスを購入したことで得られる「体験/経験」に価値を見出す消費を「コト消費」といい、
装置産業であれば、機器(モノ)を製造販売し、保守サービス(コト)でさらに顧客価値を維持管理する例を挙げました。
今回は、「コト消費」を戦略としてみた、サービス化戦略についてです。
製造業の皆さんは、保守サービス業務といえば、一般的に製品販売後の製品サポートを行う事業、つまり機能や性能を維持管理する事業と考えると思います。
つまり、製品(モノ)とサービス(コト)は一旦、切り離されたイメージです。
製造現場で装置の保守について聞くと、
「営業サービス部門が保守部品を管理しているよ」とか
「サービス会社が別でそっちでサポートしている」との返事をよく聞きます。
経験としても、一旦切り離されたイメージです。
自社が販売した装置が、客先の生産工程上でどのように生産性を向上させているのか? 効率性等の原価低減にどの程度インパクトを与えているのか?
まではあまり意識はしないかもしれません。
不良を出さす、決められた機能や性能を維持できていれば、自社に問題は無いのかもしれませんが、本当にそれで良いのでしょうか?
「ものづくり補助金」に代表される政府の支援策では、新たな設備投資が付加価値や経常利益の向上にどの程度寄与できるか次第で、補助金採択の選考基準としています。
補助金を受けるかどうかは別にしても、客先が装置(モノ)を買う理由は、まさにそこにあるわけです。
ですから、本来の製造業のサービス化戦略とは客先のビジネス活動を向上させるサポート型サービスであるべきと考えらえます。
つまり、製品(モノ)とサービス(コト)は、切り離されず、組み合わされる、または組み込まれてべきと言う考えです。
■製造業におけるサービス化のポイント
神戸大学の南千恵子教授は、このサポート型サービスへ移行するには、3つの段階があると言っています。
第一段階は、「サービスを一旦は切り離し強化する」
第ニ段階は、「客先が生み出す価値を高める方法を検討し提供する」
第三段階は、「サービスを統合し客先企業の問題を解決する」=サポート型サービスの確立です。
第一段階は、経営サイドを含め自社におけるサービス価値の共有ができないと、「サービスパラドックス」が起こる理由からです。
サービスパラドックスとは、サービスのコストが回収できず、強化すればするほど、収益が悪化する事です。
まずは、自社が実行できるサービスがまだ確立されていない場合は、ここから始めるべきだからです。
弊社生産管理システムを導入の装置メーカー様では、サービス保守会社が別で、切り離された状態でサポートをされていました。
それが、最近は製造部門内にサービス部門を新設し、保守関連会社と密接な連携を行うようになりました。
自社製品の顧客経験(Customer Experience)の把握に力を入れ始めたと感じました。
上記の階段でいえば、第ニ段階への移行です。
そう考えると、ものづくりの上流からサービスの下流に向かうサプライチェーンでは、モノ+サービスが生む新しい価値は、下流である「サービスが起点」となり上流へつながるサイクルへ、パラダイムシフトしてくると思われます。
サービスが、「戦略」や「事業」として成り立つ事は容易ではありません。
しかしながら、この先の顧客価値観の変化は確実であり、今後はサービス化戦略の考えを加速させていかなければならないと感じます。