災害に対し生産管理システムはどう対処するべきか?事業を継続する上のポイントとは
2018年9月6日未明に発生した、震度7の北海道胆振東部地震は、多数の死者を出すなど、甚大な被害をもたらしました。
震災に被災された方々には心からお見舞い申しあげます。
また、この地震では、ほぼ全道が停電になるなど、生活や産業への影響も大きく、現在も継続して対応、対策が行われています。
近年、地震や台風、大雨など自然災害が日本を襲ってきており、浸水などで生産休止を余儀なくされた弊社のお客様がいらっしゃいます。
幸い、人的被害も無く、部材も利用可能な状態で、生産管理システムのデータベースも無事でした。
そのため、清掃や生産設備の調整後、数日で生産を再開されました。
このように、自然災害からの復旧は、阪神・淡路大震災や東日本大震災など甚大な被害の経験を踏まえ、多くに企業で、数々の対策が取られていると思います。
対策の内容は、製造業であれば「出社可能な従業員の確保」「生産設備の復旧とその体制」「外注先や仕入先の状況把握や代替策」などが挙げられます。
特に製造業では、自社だけの復旧ではなく、サプライチェーンの確保が最重要課題です。
これらの計画は、一般的には事業継続計画(BCP:Business continuity planning)といわれており、特に上場企業ではステークホルダーに対し、自社のBCPを策定し公開する必要があります。
ただ、中堅中小の製造業の方からは「BCPは大手の工場が計画するものであって、我々には関係ない」と言う意見も聞かれます。
しかし、東日本大震災では、中堅中小企業の多くが、貴重な人材を失ったり、設備を失ったことで、廃業に追い込まれました。
また、被災の影響が少なかった企業においても、復旧が遅れ自社の製品・サービスが供給できず、その結果顧客が離れ、事業を縮小し従業員を解雇しなければならないケースも見受けられました。
従って、企業規模の大小に関わらず、どちらかと言うと、人、物、金の資源が限られた中堅中小企業こそ、緊急時の対応策をまとめたBCPが必要になると思われます。
BCPの一般的なメリットは、以下が挙げられています。(災害リスク評価研究所)
・業務の重要度と優先度が見えるようになる
・会社の強みと弱みが明確に見えるようになる
・取引先からの信頼性向上が付与される
・営業戦略上の企業イメージの向上が付与される
・従業員の自主性が向上するようになる
さて、IT分野、特に製造業の「生産管理システム」から見たBCPはどうでしょうか?
皆さまの方の工場では、どのような対策が取られていますでしょうか?
考えられる対策を以下に列挙したいと思います。
・バックアップ
データベースサーバーの2重化やホットスタンバイ
・クラウド化
プログラムやデータを自社内にもたず、クラウド上で管理し、被災最小化
・ペーパー化
製品図面や部材の加工図、品質チェック項目などを「紙」保存
以外と列挙するものが少ないですね。
ITシステムですから、電源やネットワークなどインフラの対策は当然ですが、それ以外でいざ書き出すと列挙できませんでした。
これはあくまで私見ですが、1年に1回防災訓練を行うように、1年に1回「生産管理システム」を止めて、生産をやってみると言うのは如何でしょうか?
まったく業務が回らないのか? 手書き伝票や口頭の指示で運用できるのか? 感と経験で出庫ができるか?など、 総じて、品質(Q)やコスト(C)納期(D)の確保を、生産管理システムが無い状態でどこまで担保できるか?という事です。
無謀な事かもしれませんが、顧客に迷惑をかけない範囲でこれらを実施してみると、自社の災害における「システム耐性」(システムが無い事によりどれだけ耐えられるか?)が判り、対策が見えてくるような感じがします。
いずれにしても、事業を継続する上で、自社の「生産管理システムの重要性」は日ごろからチェックしておくべきだと思います。
なお、一 社)日本自動車部品工業会では、ホームページ上で「BCPガイドライン」を発行し、自社や取引先に対し、BCP策定のチェックシートの作成など助言をしています。
こちらも参考になると思います。