MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)とは?どのように利用する?

MES(製造実行システム)とは?

第19回コラムでのPOP(生産時点情報管理)と同様な概念にMES (Manufacturing Execution System)エムイーエスがあります。
今回はこのMES、日本語で言うと「製造実行システム」について述べたいと思います。

通常、MESは工場現場の情報管理を三階層に分けて考えます。 上位層は「計画層」で主に生産管理や基幹システムなどERP系の情報管理システムを指します。
下位層は「制御層」で生産設備のシーケンサーや制御システムの情報管理システムを指します。
三階層ですから中間層があるのですが、生産管理と生産設備の中間の情報管理システム、ここを製造実行層の「MES」と呼んでいます。

ではMESにはどのような情報管理の機能が必要で、どのように利用すべきでしょうか?
貴社の工場には、この中間にあたる情報管理システムはございますか?
例えば「バーコードリーダー」や「スケジューラー」でしょうか?
いずれにしても、上位層と下位層をつなぐ役割があるはずですし、つながらない事による不便さを解消するものでなければいけません。


MESの11の機能

なお、MESは標準化団体MESAにより、次の11の機能があると定義されています。

(1) 生産資源の配分と監視
(2) 作業のスケジューリング
(3) 差立て・製造指示
(4) 仕様・文書管理
(5) データ収集
(6) 作業者管理
(7) 製品品質管理
(8) プロセス管理
(9) 設備の保守・保全管理
(10) 製品の追跡と製品体系の管理
(11) 実績分析

前述の、データ収集のバーコードリーダーも作業スケジューラーもMESの機能に含まれる事になります。
この二つの例であれば、 「ERPからの作業指示を生産設備で部材加工後、MESのシステムであるバーコードリーダーで作業完了読み取り、ERPへ返答する仕組み」
となり、また
「ERPからの指示をどの順でどの生産設備で加工するかのMESのスケジューラーで設備計画を行い、割り付け結果をERPへ返答する」となります。


MESを検討する11の切り口

いずれも、このMESの仕組みにより、情報が一方通行になったり、過剰負荷や、現場進捗が判らず次の指示ができない等不便、不効率を解消することになります。
こう考えると、MESは工場管理者レベルの業務を支援する情報管理の仕組みと言えます。
上記11の機能は全てが必要なわけではなく、自社の上位層、下位層の仕組みを見極め、自社に必要な中間層のMESを検討する必要があります。
検討する切り口として11の機能があると考えると判り易いと思います。

(1)生産資源の配分と監視など現場の準備はできているか?
(2)作業順位、設備やラインの割り付けなど作業のスケジューリングはできているか?
(3)製造指示や仕掛品の管理、指示変更の差立て・製造指示はできているか?
(4)図面や仕様書など正しく示され、基準を守られているか?
(5)作業の実績や記録が必要はタイミングでできているか?
(6)作業者の割当や監視など作業管理はできるいるか?
(7)製品の品質や解析など検査業務の管理ができているか?
(8)プロセス制御や作業者の意思決定支援、異常時の処理、管理ができているか?
(9)設備の事後、予防、予知など保守・保全管理ができているか?
(10)製品履歴管理、ロットトレースなど追跡と製品体系の管理ができているか?
(11)実績データの蓄積、比較など実績分析やその可視化ができているか?

上記には専用パッケージソフトも多数ありますが、製造現場は同じ製品を生産していても上位層や下位層の仕組みに違いがあり、どの現場にもパッケージが適用でき効果を発揮するわけではありません。
また、ERPや生産管理の見直しにおいても、これら中間の機能を不十分ですと見直し効果が得られない場合も多く、注意が必要だと思います。
工場の管理レベルは、これらMESによるところが大きいと思います。


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