トランプ関税が国内製造業に及ぼす影響は?
「トランプ米大統領の関税政策が世界経済を脅かしている」という記事が、2月11日付けの日経新聞に掲載されました。米国が輸入する鉄鋼とアルミニウムに25%の関税を課すという、貿易摩擦による世界経済の下押しリスクが懸念されるニュースです。今後、投資の減少やサプライチェーンの混乱が予想されますが、国内製造業への影響はどうでしょうか。
帝国データバンクによると、日本国内から米国に直接・間接に輸出する企業は製造業が最多で、約2500社。その多くは売上規模が10億~100億円未満の中堅・中小企業です。
また、これらの企業に部品等を供給している企業への影響も懸念されます。貴社の取引先に米国輸出の割合が多い企業がないか、影響度を調査することが重要です。
米国輸出への依存が高い中堅・中小の製造業は、どのような点に留意すれば良いでしょうか?
1. サプライチェーンの多様化
米国への依存度を減らすことが必要ですが、これは容易ではありません。カントリーリスク軽減のための中長期的な経営計画が求められます。
2. コスト管理と効率化
関税によるコスト増加に対応するため、製造プロセスの効率化やコスト削減策を講じることが求められます。直接費のコストダウンは多くの企業で実践されていますが、間接費にも再度注目する必要があります。
3. リスク管理と柔軟な対応
貿易摩擦や政策変更に迅速に対応できるよう、リスク管理体制を強化し、柔軟な経営戦略を採用することが重要です。
これらの取り組みは急な対応・対策を見い出すことが難しいですが、アジリティ(機敏性)を常に持っておく必要があります。
企業はアジリティを高めるために、デジタルトランスフォーメーション(DX)の考え方を以下のように進めるべきです。
1. データの活用と可視化
製造プロセスやサプライチェーン全体のデータを収集し、リアルタイムで可視化することで、迅速な意思決定が可能になります。これにより、問題発生時の対応速度が向上します。
2. 自動化とAIの導入
生産ラインの自動化やAIを活用した予知保全システムの導入により、効率化と生産性向上が期待できます。
3. デジタル人材の育成
DXを推進するためには、デジタルスキルを持つ人材の育成が不可欠です。
4. 柔軟な業務プロセスの構築
DXを進めることで、業務プロセスの柔軟性を高め、変化に迅速に対応できる体制を整えることが重要です。
5. 顧客ニーズに応じた製品・サービスの提供
デジタル技術を活用して顧客のニーズを迅速に把握し、それに応じた製品やサービスを提供することで、競争力を維持・向上させることができます。
これらの取り組みを通じて、国内製造業はアジリティを高め、変化の激しい環境に適応していくことが求められます。
なお、このニュースに先立ち、経済産業省はジェトロ本部に「米国関税措置等に伴う日本企業相談窓口」を立ち上げました。
北米地域等を専門とする専門家を配置し、広く日本企業からの個別相談に対応します。急を要する場合などは、まず政府機関へ相談することも必要かと思います。