R-PiCS V4へのバージョンアップ 決め手は低コストと長年の運用に耐えてきた実績
昭和機器工業株式会社
従業員数:101~200名/業種:輸送用機械器具/導入製品:R-PiCS V4
<左から>統括部長(営業・業務担当) 力久 宣良 氏
営業部 生産管理課 副課長 加藤 正浩 氏
業務部 総務課 副課長 渡部 幸夫 氏
会社プロフィール
会社名 | 昭和機器工業株式会社 |
---|---|
所在地 |
〒355-0215 |
設立 | 1947年10月2日 |
資本金 | 4,000万円 |
従業員数 | 160名 |
事業内容 | ・リコイルスタータ(汎用エンジン始動用) ・フラッパーバルブ(空気圧縮機用、冷凍機用) ・バルブプレート(エアコン用) ・リードバルブ(2サイクルエンジン用、自動車排ガス制御用) ・電機部品、自動車補機部品 ・精密金型、治具 ・フッ素樹脂コーティング |
URL | http://www.skkjapan.co.jp/index.html |
昭和機器工業株式会社(以下、昭和機器工業)は、埼玉県の比企郡嵐山町に工場を構え、カークーラーの中心ユニットであるコンプレッサーの機能プレス部品やリコイルスターター(汎用エンジン始動装置)などを製造する「輸送用機械器具」メーカーだ。その確かな技術力で、様々な国内主要自動車メーカーに昭和機器工業の製造した部品が採用されている。特に非常に薄く、疲労耐久性を必要とする弁部品を大量に打ち抜くことができる技術力には定評があり、主にスウェーデンのサンドビック社と日本の日立金属しか作れない材料を加工できる、日本でも数少ない企業の一つである。
<カーエアコン用コンプレッサー>
■属人的な管理手法からの脱却を目指して生産管理のシステム化を検討
生産管理システムを導入する前の昭和機器工業は、生産管理や在庫等はすべて個人のExcelで管理されており、情報共有化が出来ていなかった。例えば毎月の棚卸も各個人がそれぞれのExcelで集計していたため、情報と現物が一致しなかったり、在庫の集計に長い時間を要するなど、従業員の負担となっていた。例を挙げるとスキルのある人の中にはExcelのマクロなどを使用して業務の効率化を図っていたが、結局は人依存であったため、会社全体で見ると数量が合わない、かかる作業時間がまちまち等の不整合があったという。
当時の状況を営業部 生産管理課 副課長 加藤 正浩 氏は次のように振り返った。
「例えば品目コードの管理なども人によってまちまちで、作業に要する時間もそれぞれ異なるため、会社として早期に統一化が必要だと感じていました」
<営業部 生産管理課 副課長 加藤 正浩 氏>
■加工と組立、異なる2つの運用を1システムで可能なR-PiCS V3の導入を決定
昭和機器工業ではこうしたExcelでの管理に限界を感じ、生産管理システムの導入を決意することとなる。統括部長(営業・業務担当)力久 宣良 氏は、生産管理システム導入当時の状況を振り返り、次のように語った。
「会社全体でこれからの企業成長にとって、こうした状況が良くないとの認識はありました。当時、社外のアドバイザーからの指摘もあり、当社でも生産管理システムの導入を始めよう、ということになりました。
ですがシステムの選定は一筋縄では行きませんでした。例えば当社の場合、弁の加工業務なら単一部品ですので、材料のプレス加工以降は一気通貫で出荷まで行けるのですが、リコイルスターターという製品は組立業務のため、構成や部品調達等の所要量計算が必要というように、全く異なる工程の作業を管理する必要がありました。これはExcelのような表計算ソフトでは到底コントロールが出来ません。そして運用方法も人によってバラバラだったので、オーダーの多い時期は集計に時間がかかるなど、残業も増えました。丁度取り扱い品目も増えてきたこともあり、人依存の運用では限界に来ていたのがきっかけだったと思います」
昭和機器工業では、所要量計算や在庫管理ができるシステムが必要と判断し、『新撰組』という社内プロジェクトを立ち上げて、生産管理システムの選定・導入プロジェクト開始した。
「情報収集した結果、パッケージ・スクラッチ開発を含む7社ほどから提案を受けることになりました。このシステム選定には社外のアドバイザーも協力をしてくれたのも大きかったですね。最終的にはその方の推しもあって、導入するシステムをR-PiCSに決定することになりました。採用理由は価格がリーズナブルであったことと、提案いただいた内容が当社のモノづくりの思想と合っていたことが大きな理由です。実は私個人は別のシステムも気になっていたのですが(笑)、ほかはほぼ満場一致でした」(力久氏)
こうして昭和機器工業ではR-PiCS V3を導入することとなる。
<統括部長(営業・業務担当) 力久 宣良 氏>
■R-PiCS V3運用定着のため毎週勉強会を実施。 毎月の棚卸しが半期に1回に
昭和機器工業ではR-PiCS V3の導入を進めることになるが、生産管理システムに詳しくないメンバーが多かったので、マスタを登録するといった作業が、どう自社の運用につながっていくのかのイメージがわかなかったという。
「R-PiCS導入当初は初の生産管理システム運用ということもあり、現場では戸惑いもありました。ですが触って行くうちに、まず主要メンバーから理解が進んでいき、個人管理から会社全体での運用に徐々に移行することができてきました。
更に、最終的に運用開始から現場に定着するまでは時間がかかりました。例えば当時はPCの数も人数分用意できていなかったので実績の入力待ちがあったりしました。まだまだ個人管理Excelから完全に脱却出来ていなかったので、Excelで確認してからシステムに入力するなどの2度手間があったりと、完全な定着までは時間がかかっていました」(加藤氏)
「社内で新システムに慣れて行くために毎週勉強会を行ったりしました。当初はシステムに合わせて運用する方針ではありましたが、運用が定着してくると、やはりこれは必要だという機能も出てきて、追加で開発したりと柔軟な対応が出来てきました。
その結果、とにかく在庫がきちんと管理できるようになったのが大きかったですね。在庫精度が上がってきたことによって、それまで毎月行っていた棚卸が年二回でよくなりました。在庫の差異もきちんと把握でき、二重確認と言った手間も減ったので、経営的にも安心感につながりました。
また、毎月実施しなくなったことで余裕が生まれたので、現場の意識も変わってました。例えば事前に棚卸準備をするようになって、効率を考えるといったようにです」(力久氏)
当時の昭和機器工業では、棚卸業務は年12回の実施で1回毎に半日はかかっていたという。R-PiCSを入れてからは1,500時間/月は削減されることとなり、非常に大きな効果だったと加藤氏は振り返る。
「その他にも資材在庫が把握できるようになったので、余剰在庫が簡単にわかるようになりましたね。R-PiCSの安全在庫機能も使っています。アラートが出るので在庫切れになる前に発注できて助かっています」(加藤氏)
■R-PiCS V4へのバージョンアップを決意 決め手は低コストと長年の運用に耐えてきた実績
10年以上にわたり長く使い続けてきたR-PiCS V3だったが、システムのサポート期限が近づいてきたこととサーバー保守切れのタイミングがちょうど合致したこともあり、昭和機器工業では「R-PiCS V4」へのバージョンアップを決意する。選定当時の状況を振り返り、業務部 総務課 副課長 渡部 幸夫 氏は次のように語ってくれた。
「当社ではR-PiCSを基準として業務運用がすでに定着しているので、実際は他社への切り替えはほとんど考えませんでした。R-PiCSのバージョンアップ費用は保守ユーザーであれば安価に購入出来るので、他社を見積もっても費用が倍以上になりますし、せっかく定着してきた業務も大きく変える必要も出てしまいます。その上、また他のシステムに移行するための期間や工数も考えると、R-PiCS以外のシステムは想像できない、というのが本音でした」
また同社では全部をR-PiCSで運用しようとは考えてはおらず、不足部分は追加開発するなど、柔軟な考えが上手くシステムを運用するコツだと渡部氏は指摘する。
「当社は会計システム以外でR-PiCSでこなせないところは、全て自社で開発しています。例えば主要顧客との受発注業務があってEDIを使っているのですが、EDIの受注データは一度修正してからR-PiCSへ連携しています。こうした連携は都度変わってしまうことがあるので、柔軟に対応するために自社で開発をしているのです」(渡部氏)
また、V4バージョンアップをきっかけとして、さらなるシステム改善の見直しにもつながったという。
「主に帳票に関係する部分ですが、V3運用当時だと帳票の変更点は手書きで注釈事項を追記して運用している状況でした。ですがV4へのバージョンアップをきっかけに帳票の運用を見直す良いタイミングになりましたので、追記事項もシステムから出せるようにアドオンいたしました。その他にも、当社のお客様は自動車関連なので、トレーサビリティの要求が強く、時代に合わせて帳票も変更が求められてきました。バージョンアップのタイミングで、これまで運用で逃げていた部分を改修できたので、見直す良い機会となったと感じています」(渡部氏)
渡部氏は改めて今回のV4へのバージョンアップについて、大きな変化もなくスムーズに移行することが出来たことこそがメリットだと話す。
「新しいV4ではグリッド画面をそのままコピーして、Excelに貼り付ける機能があります。V3の時はわざわざ印刷してからシステムに入力していたので、このコピー機能は現場でも便利になったと好評です。大きな混乱なくV4へ切り替えることができたわけですが、それは裏を返すと変化が少なかったので、業務に影響を及ぼすことなく移行が出来たとも言えるでしょう。確かに画面は変わりましたが、それでも不都合なく現場で違和感なく使えたことは、R-PiCSを長年使い続けて来て運用が定着している安心感があったからだと思います」(渡部氏)
<業務部 総務課 副課長 渡部 幸夫 氏>
■今後はR-PiCS V4をインドネシア工場でも運用し、日本との連携を図りたい
昭和機器工業にはインドネシアのジャカルタから車で1時間半のカラワンにある工業団地にも工場があり、今後はそこでもR-PiCSを運用して行きたいと力久氏は話す。
「現在、インドネシアの工場ではR-PiCSとは別の古いままのシステムが稼働しています。月次管理は出来ていますが、経営層としてはリアルタイムにインドネシアの状況が見えない(管理ができない)ことがネックと考えていて、情報入手までに時間がかかるのを何とかしたいという思いがあります。まだまだ調査に時間がかかったり、やらなければならないことは数多くありますが、当社にとってはインドネシアと日本で情報共有ができればベストですね。」
昭和機器工業は日本のものづくりとともにグローバルへと拡大していく。
<リコイルスターター>