ダイナミック・ケイパビリティ(自ら変革する力)とは?製造業の対応方法は?

■ものづくり企業の「自ら変革する力(ダイナミック・ケイパビリティ)」とは?

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除されました。
とはいえ、それまでの日常へはなかなか戻れず、Withコロナニューノーマルなど制約や不確実性の中で業務を再開しなければいけません。

 製造業は、出社や移動が困難になるなど人的影響に加え、サプライチェーンが寸断するなど、物理的にも多大な影響を受けています。
徐々に戻りつつある供給側の影響ですが、需要側の回復が大きく遅れており、このままでは「物は作っても売れない」状況が続きます。
国の保証金や補助金など施策面での対応の遅れ等もあり、不確実性は高まったままです。

 5月末に発行された「2020年版ものづくり白書」では、このような不確実性に注目し、UCバークレー校ビジネススクールのJ・ティース教授が提唱した経営理論である
「ダイナミック・ケイパビリティ」を取り上げ、ものづくり企業への対応を示唆しています。

 ダイナミック・ケイパビリティとは、
「急速に変化する環境に対応するため、社内外にある技能を統合・構築・再構成する能力」
と解釈されています。

簡単にいうと「自ら変革する力」ですが、「変化に対応する(不可実性に対応する)こと」が必要です。

 製造業におけるケイパビリティ(能力)とは、有形無形の競争優位な資源と言い換えられます。
たとえば、「高速精密加工を行える機械やそれらを設定・操作をする作業者」「変種変量の製品を短納期で生産できる仕組み」などです。競争力の源泉と言えます。



 では、ダイナミックとは何でしょう?
白書では、オーディナリー(普通とか通常)というワードと比較し説明しています。

「オーディナリー・ケイパビリティ」(通常の能力)とは、与えられた経営資源をより効率的に利用して、利益を最大化しようとする能力のことである」
として、その指標(KPI)は、労働生産性や在庫回転率のように測定できる物と考えられています。
以前、本コラムでも記載しました、生産管理コラム 61回 令和元年に始めるSWOT分析とは?
にあるように、強みや弱み、機会や脅威など内部環境と外部環境分析から見つける競争優位な資源も、「オーディナリー・ケイパビリティ」と言えます。

 しかし、「オーディナリー・ケイパビリティだけでは、企業は競争力を維持できない」として、その大きな理由について白書では、
「競争優位な資源と思っていることは、洗練され、精緻化されていればいるほど、それを変えるコストは高くなってしまう」
「現状維持の方が短期的には経済合理的になるという罠に陥ってしまう」
からである、書いています。
生産管理コラム 65回 ラン・ザ・ビジネスと「2025年の崖」とは?
に記載した、レガシーシステムへの対応問題を思い出します。
「オーディナリー」では無く「ダイナミック」に能力を高めることが必要であるという事です。



 では、ものづくり企業はどのようにすれば「ダイナミック・ケイパビリティ」の能力を得る事ができるのでしょうか?
以下の3つの要素があげられています。

感知(センシング)
捕捉(シージング)
変容(トランスフォーミング)

 SWOT分析した脅威や機会を、一定間隔やいつでも「感知(センシング)」し、それを「捕捉(シージング)」して、有形無形の資源を再構成(オーケストレーション)して競争優位を獲得する。
そして、それを持続可能にするために組織全体を「変容(トランスフォーミング)」させることです。


しかし、これを実現するのは簡単ではありません。
従来のPDCAでは無くOODAループの考えが必要だと感じます。
生産管理コラム 63回 PDCAサイクルでは無く、OODAループとは?

または、その考えを実現できる組織が必要です。
 生産管理システムの更新を例にとりましょう。
顧客や製品など業務環境に合わなくなった生産管理システムを更新しなければならない時、既存の関連する職務や運用、権限体系を変更するのに、時間とコストがあまりにも高いと、競争優位なオーディナリー・ケイパビリティに大きな変革を避けようとする場合があります。

「生産計画の変更は、製造部では関与せず、必ず生産管理部からの再指示が無ければならない」とか
「購買部での発注は必ず一覧にして確認、上長が捺印してから発注する、それが弊社の発注ミスを無くす従来からのやり方」等は今でも良く聞く話です。



 ダイナミック・ケイパビリティにおいて優位で柔軟な組織は、
「職務権限は職務や地位に帰属させ、そこに人を割り振り、権限を曖昧し、特定の権限の保有期間を短くする」としています。

職務権限があいまいなため、組織変革に伴って生じるコストが小さく、新しい生産管理システムを導入しやすい構造になるからです。

ものづくり企業の不可実性が高まる中、このような「ダイナミック・ケイパビリティ」の考え方は有効ではないかと感じます。

長年続く企業の多くは、環境の変化を捉え、「変えないところと変えるところ」を上手く組み合わせています。
白書では、「我が国における創業百年以上の老舗企業において、製造業は全体の4分の1を占めている。
このようなことから、我が国製造業にはダイナミック・ケイパビリティが高い企業が比較的多い」 とまとめています。



不可実性を受け入れ、乗り切って行きましょう!


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