中堅・中小製造業におけるDXジャーニーとは?製造業の抱えるDXの問題から解決

中堅・中小製造業におけるDXジャーニーとは?
製造業の抱えるDXの問題から解決

DXは世界的に進んでいるものの、製造業などの業界ではあまり浸透していない部分でもあります。
しかし、製造業こそDXを進める必要があると言われているのです。
今回は製造業がDX化していくにはどうしたらいいのかを解説します。

目次



製造業におけるDXの基本情報

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DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、Wikipediaによると「企業がテクノロジーを利用して事業の業績や対象範囲を根底から変化させる」ものと記載されています。

単純に、「デジタル変革」と訳す方もいますが、DXとはITを導入して「便利になった」「役にたった」という程度のものではありません。

DXとは、デジタル技術によって新たなビジネスモデルを創出するなど、革新的な事象を指す言葉です。

2018年12月、経済産業省は、新たなデジタル技術が新たなビジネスモデルを生むなど、企業の競争力維持・強化の必要性から、「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」(DX推進ガイドライン)を発表しました。

2016年 第24回の本コラムでも記載した「ウーバライゼーション」は、デジタル技術による新たなビジネスモデル、つまりDXそのものです。

ITを利用した新たなビジネスモデルの創出は、その多くがITベンチャーをはじめ、小規模ビジネスから発信されています。

しかし、既存の企業が、自社や他社が持つITなどデジタル技術を利用して、新たなビジネスモデルを創作するのは、簡単なことではありません。

経済産業省のガイドラインは、DXの推進は経営戦略や経営者の意識改革も必要である点から、

・DX推進のための経営のあり方、仕組み
・DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築(体制、仕組み、実行プロセス)

を柱に、事例や失敗ケースを記載していますので、DXをどのような姿勢で臨むべきかの参考になります。



DXジャーニーとは?

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さて、今回のタイトルはデジタルトランスフォーメーション(DX)に、さらにジャーニー(Journey)を加え、DXジャーニーとしています。

ジャーニーとは、日本語に直訳すると「旅行」です。「DXの旅行」とは何だか判りにくいかもしれませんので、少し説明します。TripやTravelと比べ、Journeyは少し「長旅」のイメージです。

Wikipediaにある「事業の業績や対象範囲を根底から変化」させるDXを実現させることは、それほど簡単ではありません。

そのようなDXを実現するために、「目標や目的、道順を決めましょう!」という意味を指す言葉が 「DXジャーニー」です。

では、このDXジャーニー、製造業にはどのように関係するのかまたはどう考えれば良いのでしょうか。

この記事では、中堅・中小製造業に当てはめ、考えてみたいと思います。

弊社が提供しているIT「生産管理システム」は主に、「業務の効率化」を目標や目的に導入されています。ここが旅の出発点です。日本における業務システムは、このように「プロセスを変える」現場のコスト削減を目的に導入される場合が多く、欧米などの経営的戦略的目的が少ないことが特長です。

「売上の拡大」を主な目的とする場合は、この「業務の効率化」とは対極的である、「顧客価値の向上」を目標や目的に導入されます。「顧客価値の向上」を達成するためには、単なる現状の「プロセスを変える」程度ではなく、「ビジネスモデルを変える」ものでなければなりません。

つまり、「ビジネスモデルを変え」「顧客価値の向上」(売上の拡大)を図る。これを、DXジャーニーの最終目標とします。

では、旅の始まりである、生産管理の導入「プロセスの変革」による「業務の効率化」(コスト削減)から、どのように「ビジネスモデルの変革」による「顧客価値の向上」(売上の拡大)へ向かえば良いでしょうか?


製造業でDXを実現するための2つのルート


大きくは、2つのルートがあると考えられます。

1つ目は、「業務の効率化」をしながら「プロセスを変え」、その後に「ビジネスモデルを変える」ことで「顧客価値の向上」へ向かうルート。

2つ目は、「業務の効率化」から「顧客価値の向上」へ目的・仕組みを変え、そして「ビジネスモデルの変革」へ向かうルート。

一足飛びDXジャーニーの目的達成を狙う3つ目のルートも考えられますが、冒頭に記載しましたように、新たなビジネスモデルの創出は難しいものです。経営戦略など経営トップのコミットメントや投資、DX推進のための体制推進、さらに変化への追従力が必要となります。

そのため、このルートはこの記事では考えないことにし、上記2つのルートを考えてみましょう。

まずは1つ目の方法について説明します。

旅の起点である、「生産管理システムが立ち上がり、効率化も何とか図れた」という状態を達成したら、次に行うのは「ビジネスモデルの変革」です。

この場合、これまでのビジネスモデル、つまり「儲けのしくみ」を変革するために、生産管理システムに不足するITを補完します。

例としては、自社製品を新たな用途である新市場へ販売するビジネスモデルを追加することなどが考えられます。

新規ITシステムとして、新規市場向けEDIシステムを投入、受注情報の自動取込から在庫引当、納期の自動回答と即時出荷の体制のプロセスの変更を実施する。・・・といったイメージです。

続いて、2つ目の方法について説明します。

旅の起点である、「生産管理システムが立ち上がり、効率化も何とか図れた」という状態から、次に目指すのは、「顧客価値の向上」です。

これまでの業務の効率化の視点ではなく、顧客価値の向上へシフトします。自社の都合ではなく、顧客視点での「どうすれば顧客が喜ぶのか」、「どうすれば自社製品が顧客のビジネスの価値を向上させられるか」などの視点で考えましょう。

例としては、自社製品の販売後、顧客の利用状況や故障状況などを把握するために、Iot装置を導入することなどが考えられます。既存の生産管理システムと連携し、故障部品の即時発注や予防保存、品質改善を行う。・・・といったイメージです。

いずれも次は最終目的地である、新たな「ビジネスモデルの変革」による「顧客価値の向上」への険しいルートが待っています。

このように、デジタルによる変革は、一足飛びに実現することは困難です。回り道に見えるかもしれませんが、順次ステップを踏む方法をおすすめします。



製造業が抱える現状の課題


さて、ここまでDXを達成するためのDXジャーニーについて解説してきました。

製造業においてもDXの推進が求められていますが、そもそも、その背景には製造業が抱えている課題の存在があります。ここからは、製造業が抱える現状の課題について少し考えてみましょう。

最初に考えられる課題は、人手不足です。少子高齢社会の影響や働き方の多様化によって、製造業の人手不足は深刻な問題となっています。また、少ない人員で業務をこなしていることから、それぞれの業務の属人化が進んでしまっていることも課題です。

また、市場が求めるクオリティが高まっていることで、既存の製造ラインへかかる負担が大きくなっています。従来通りの「効率化」や「生産性の向上」といった取り組みでは対応できない企業も増えているため、抜本的な改善策が必要です。



製造業のDX化で得られる5つのメリット

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人手不足や属人化、効率化や生産性の向上といった製造業の課題を解決するために役立つのが、DXです。ここからは、製造業のDX化で得られる5つのメリットをご紹介します。

現場の作業工数の削減


DXを推進することで、現場の作業工数が削減する効果が期待できます。

属人化されていた業務、品質管理、製造工程の管理などの工数に大きく影響する業務は、DXによって標準化することが可能です。標準化によって作業の重複や巻き戻し、クオリティレベルの差がなくなるので、工数は大幅に削減されるでしょう。

生産体制の効率化と安定


DXによって生産工程を標準化することで、生産体制の効率化と安定も期待できます。

原材料管理や在庫管理、受注出荷管理といったロジスティクス分野をデータで管理できれば、JITが可能となり効率的な生産体制を確立できるでしょう。また、生産工程を常にデータ管理することは、生産の安定化にも寄与します。


労働時間の短縮


DXで現場の作業工数が減れば、それだけ労働時間の短縮効果も期待できます。

製造業にも働き方改革が求められる中、長時間労働問題を解決できれば、次世代を担う新しい働き手の確保も容易になります。

数字で管理しているものの効率化


現状で既にデータとして管理しているものがある場合、DXでさらに効率化することも可能です。

DXが実現すれば複数のデータを一元管理できるので、これまでサイロ化されていたデータを融合したり、必要な際に必要な情報をすぐに取り出せるなど、データを素早く簡単に管理できます。

人材不足の解消


人手不足解決の手段となることもDXのメリットです。

DXによって工数が削減されれば、少ない人数でもこれまで以上の業務を回せるようになるため、それだけ必要な作業員が減ります。人件費の削減にもつながるので、生産コストを削減したい企業にとっても魅力的なメリットと言えるでしょう。



製造業でDX化をする際のデメリット


製造業でのDX化には多くのメリットがありますが、その反面いくつかのデメリットも存在します。DX化を進める際は、デメリットも理解しておくことが重要です。ここからは、DX化する際の代表的なデメリットを2つご紹介します。

短期的にコストがかかってしまう


1つ目のデメリットは、短期的にコストがかかってしまうことです。

DX化する際には何かしらのツールを利用することとなりますが、その導入には少なからずコストがかかります。また、既存のDXサービスを利用せず自社開発する場合には、より多額の開発コストが必要です。

このようにDX化を推進する際はイニシャルコストがかかります。しかし、DX化による業務効率化なども考慮した場合、長期的なコスト削減効果はイニシャルコストよりも大きくなるケースが一般的です。

引継ぎや使い方に慣れるまでに時間がかかる


DX化を進める際、引継ぎや使い方になれるまでに時間がかかるケースが多いです。

これまでアナログな方法で業務を進めていたため、最新のツールの使い方に戸惑ってしまう人も少なくありません。

しかし、時間がかかるのは導入初期だけで、長期的には大幅な工数削減や労働時間の短縮が期待できるので、乗り越えるべきデメリットであると言えるでしょう。


製造業でDXを進めるための3つのステップ


製造業でDXを導入する重要性を認識しつつも、具体的にどのようにDX化を進めていけば良いのかわからない方も多いのではないでしょうか。

ここからは、製造業でDXを進めるための3つのステップをご紹介します。自社のDXジャーニーを考える際、参考にしてみてください。

課題や問題の明確化


まずは、自社の課題や問題を明確化する必要があります。

DX化は目的ではなく、あくまでもビジネス上の課題を解決するための手段です。DXを導入することで、どのような課題を解決したいのかを明らかにしましょう。

どのようにしたら解決されるのかの検討


課題や問題が明確になったら、どのように解決するのが最適なのかを検討します。解決手段の1つとして、DXを位置づけましょう。

また、DX化を進める際は、検討段階から現場の声を聞いておきましょう。DX化で最も影響を受けるのは、現場のスタッフです。通常業務に支障が生じないか、現場としての懸念事項がないか等、あらかじめヒアリングしておきましょう。DXの導入によってどのような状態になることが望ましいのか、現場と管理部門で認識共有できている状態が理想です。

また、DX化を進める場合、さまざまな業務をデジタル化しなければなりません。紙ベースの業務をデジタル化し、データとして管理していく必要があることも覚えておきましょう。

実際に施行してPDCAを回す


解決方法を検討したら、実際にDX化を進めます。この時、すぐにDX化を完了させるのではなく、実際に施行してPDCAを回すことが重要です。

DX導入時には、当初の想定通りに進まないことも多々あります。そのため、定期的に改善活動をしていくことを前提とした計画にしておきましょう。



実際に製造業のDXで多い施策


最後に、実際に製造業でどのようなDX施策が導入されているのか、具体例を3つご紹介します。

生産や集計データのシステム化


精算や集計データのシステム化は、製造業における最も一般的なDXです。

現状でも各種データを集計している企業は多いですが、生データの入力を作業員が行っている場合は集計漏れやデータのムラが発生するリスクがあります。また、データの入力は時間がかかる業務なので、従業員の労働時間を長引かせる原因にもなるでしょう。

そのようなデータ集計をDXで自動化すれば、従業員の負担を減らしつつ、データの信頼性を担保できます。経営の意思決定の基となるデータ収集をDX化するメリットは大きいです。

紙ベースで行っている業務のペーパーレス化


紙ベースで行っている業務をペーパーレス化することも、一般的なDX施策です。

業務日報や報告書などの紙で管理している情報をデジタル化することで、労働時間を短縮させられます。また、デジタル化した報告書などはデータとして管理されるため、分析しやすくなることもポイントです。

これまで現場の作業員が「なんとなく」感じていた状態を見える化することで、人材教育に役立てたり、生産管理の効率化を図れる効果も期待できるでしょう。

IoT機器で生産ラインのデータ収集・分析


IoT機器で生産ラインのデータを収集・分析するDXもよく実施されています。

工場にIoTを導入することでデータをリアルタイムで一元管理でき、複数の部署間での情報共有を容易にすることが可能です。

また、生産に関するデータを確実に集計できるので、経営指標としても使いやすくなります。



まとめ

この記事では、中堅・中小製造業が抱える課題をDXで解決するDXジャーニーについて解説してきました。

製造業でDX化を進めるためには、一足飛びな方法ではなく、それぞれの企業に合わせたステップを踏む必要があります。

まずは自社の課題を明確にし、どのようなIT技術を用いれば解決できるのかを考えましょう。そして、実際に生産管理システムなどのIT技術を導入した後も、定期的にPDCAを回していくことが重要です。

そして、技術の導入により効率化が図れた後は、「ビジネスモデルの変革」もしくは「顧客価値の向上」を目指し、DXジャーニーの目的地を目指していきましょう。

<文責>

JBATマーケティング 編集部


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